学長メッセージ「つながり」アーカイブ

──新たな日常のはじまり──

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学生の皆さん、こんにちは。
新年度が始まり間もなく1か月が経とうとしていますが、いかがお過ごしでしょうか。
2020年から続いてきたコロナ禍の影響が残る中で迎えた新年度ですが、コロナウイルス感染症の分類5類への移行に伴い本学の危機管理指針レベルも0になり、新たな日常のはじまりを感じる春でもあります。
新入生の皆さんには入学式でお話ししましたが、本学は、キリスト教の世界観や人間観に基づいて、全人的高等教育を通して、広く人類社会に対する愛と奉仕に生きることのできる、高い知性と豊かな人間性を兼ね備えた女性を育てることを使命としています。そのキリスト教の世界観や人間観の要は、一人ひとりの人間は神の似姿であり、それゆえ、まさにオンリーワンの一個人として侵すべからざる尊厳をもつ、という考えです。
藤学園のモットーでは、この考えはこう表現されています。「ひとりひとりの咲くべき花を咲かせよう。――うつくしく やさしく しなやかに――」。まさしく、オンリーワンとしてひとりひとり人間が神の似姿なので、キリスト教では、神に加えて人を愛することは最大の掟なのです。
ところが、織田信長の時代にヨーロッパから日本にやってきた最初の宣教師たちは、愛こそ最大の掟である、と言ったとき、周りから嘲笑されました。なぜなら、中世以降の仏教思想の影響で、愛という言葉は、種々の欲望をおこすこと、物に執着すること、という意味で通用していたからです。このことが分かって以来、宣教師たちは「愛」という言葉を避け、代わりに「大切」、「ご大切」という言葉を使いました。
新約聖書は元々ギリシャ語で書かれていますが、そのギリシャ語では「愛」を指す単語は三つもあります。一つは、最初の宣教師たちが日本にやってきた当時の意味ですが、聖書の中には出てきません。もう一つは、「人に親しむ」「人が好き」などのように、人に情を示す単語です。こちらは聖書にも出てきますが、聖書の中で一番よく使われているのが三つ目の単語です。それは、情などとは関係なく、「人を思いやる」、「人を大切にする」という意味です。そういった意味において、聖書の中でこう力説されています。「いつまでも存続するのは、信仰と希望と愛と、この三つである。このうちで最も大いなるものは、愛である。」
 
皆さんが人を大切にする心を育んでくださるとともに、人への思いやりのためにも、学内や公共の場での感染防止対策に努め、楽しく充実した学生生活を過ごされるよう願っています。
 

2023年4月26日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス

──ハロウィン──

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皆さん、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
この度、韓国で起きました転倒事故により150人以上の若者が犠牲になりました。
心よりご冥福をお祈りいたします。
 
もとよりハロウィンは諸聖人を祝う前夜祭という意味です。
古代キリスト教では復活節(春)の祝いでしたが、その祝日が春から秋に移ったのは、ゲルマン人がヨーロッパに住み着くまでは、古来各地に住んでいたケルト人が新年を迎えるために執り行った祭りをキリスト教に取り込むためでした。ケルト人の暦では10月31日は大晦日に当たり、元日にかけての夜には死者の魂が家に帰ってきてお化けや魔女も出る恐れがある、と信じられていました。身を守るために、変装したり、火を焚くなどの習慣がありました。この祭りに洗礼を授けるため、まずアイルランドの教会で11月1日は諸聖人を祝う日に決まった次第です。そして現在のイギリス領にあったノーサンブリア王国に継承されてから早くも新しい日程が全欧州に広まったのです。
当時、西方キリスト教の世界では、ノーサンブリア王国の首都ヨークにあった司教座聖堂付属学校は最高の学府でした。その水準に近づこうと、カール大帝は校長のアルクィンをアーヘンにある宮廷付属学校に招き、自らも家族と一緒によくアルクィンの授業に参加しました。こうした経緯もあって、長男ルートヴィヒが皇帝になったとき、11月1日は西方キリスト教の各地で諸聖人の祭日に定められました。

2022年10月31日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス

──アッシジの聖フランシスコ──

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皆さん、こんにちは。
いかがお過ごしでしょうか。今回は、聖フランシスコの祝日についてお話ししましょう。
本学カトリックセンターの今回のニュースレターにも述べられているとおり、世界のキリスト教諸教派は毎年9月1日から聖フランシスコの祝日である10月4日までを「被造物の季節」として共同で環境配慮キャンペーンを行っています。聖人の最も有名な画像は、ジョットが描いた小鳥に説教する姿でしょう。また、イタリア語で書かれた最古作品の一つは、太陽も月も風もすべて「兄弟姉妹」と呼ぶ「太陽の賛歌」です。
環境保全に加えて、諸宗教の間の対話についても聖人は先見の明のある人であったので、教皇ヨハネ?パウロ2世の招きで、1986年10月、初めて各宗教の代表者は一緒に祈るためアッシジに集い、その精神を継承して、2003年以来、三年ごとにカザフスタンの首都アスタナで「世界伝統宗教指導者会議」が開催されることになっています。9月14-15日に開かれた第七回目に現教皇も参加していました。
フランシスコは、12世紀の終わり頃、富裕な織物商の子として生まれ育ちました。青年時代に故郷アッシジと隣町ペルージャとの間に戦争が起こった時に参戦し、捕虜となってしまいました。一年間の獄中生活や大病の経験が、ただのお坊ちゃんとしての進路について考え直すきっかけとなり、ついにフランシスコは父に相続権の放棄を告げ、イエス?キリストの精神をできるだけ多くの人々の間に広めるため、数名の仲間と巡回宣教活動に専念しました。
十字軍遠征が盛んな時代であったので、フランシスコらは当時イスラム教の中心地であったエジプトに渡り、スルタンのマリク?アル?カーミルとも面会ができるほどの反響を引き起こしていました。当地でマラリアとトラコーマに罹り、イタリアに戻ってから、病が次第に重くなり、ついにほぼ全ての視力を失ってしまいました。「太陽の賛歌」を作ったのはその時でした。その中で、月や水などに加えて、死をも「姉妹」と呼びかけたのは、おそらく、近づきつつある、と予感していた最期を素直に受け入れられたからでしょう。

 
2022年10月4日(聖フランシスコの祝日)
学長 ハンス ユーゲン?マルクス

──ロシアとウクライナに共通のルーツ──

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皆さん、こんにちは。
いかがお過ごしでしょうか。今回は、いま世界中でニュースになっているロシアとウクライナ、二つの国に共通であるルーツについてお話ししましょう。
国号としてロシアは18世紀初頭以降通用していますが、それ以前の国号はルーシまたはルースでした。初めてそのように称されたのは、9世紀、現在ウクライナの首都キーフを中心にできた大公国でありました。
伝統的な年代設定によれば、988年1月6日、大公ウラジーミルがビザンティン皇帝の妹と結婚する前に洗礼を受けたので、臣下もこぞって洗礼を受けることになりました。ちなみに、両国の大統領は大公の名前をファーストネームとして共有しています。当初、キーフに立てられた主教はコンスタンティノポリス総主教の直轄のもとに業務を励んでいましたが、11世紀の前半以降、キーフ府主教として自立していました。
北東部の開発に伴って、交易路としてモスクワ川が重要性を増していく中、河岸に築かれた城塞もますます注目されることになり、1236年以降のモンゴル体制の下では、新たな公国の中心になりました。やがて、キーフ府主教もモスクワに移ってきました。
1448年以降、称号は「モスクワと全ルーシの府主教」に改められた経由で、1589年には「モスクワ総主教」に決着した次第です。

2022年6月6日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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ご無沙汰しております。新年度が始まりましたが、いかがお過ごしでしょうか。一昨年の春、コロナ禍のもとにもつながりを図ろうと、このコラムを開始いたしました。感染の勢いが和らいだことを受けて、昨年の秋から休ませていただきましたが、せっかくの場と反省しているので、再度投稿させていただきます。
御存じのように、キリスト教最大のお祭りは、キリストの誕生を祝うクリスマスとその復活を称えるイースターです。固定祭のクリスマスとは対照的に、イースターは春における二回目の満月に続く最初の日曜日に催され、今年は4月17日に当たります。それはユダヤ教の過越祭に関係しています。そのお祭りの際、キリストがはりつけになった三日目によみがえった、と聖書に記されています。これに類似するようなキリストの誕生についての情報は、聖書に見られません。
古代ローマでは、12月25日は「征服されることなき太陽」の祭日で、ミトラ教最高神の誕生が祝われていました。キリスト教を抱いた最初の皇帝は、キリストこそ征服されることなき太陽だと印象づけるため、12月25日をキリストの降誕祭に定めました。そして、ユダヤ教と同様に教会の暦でも一日は夜から数えられるので、12月24日はクリスマスイブです。
4月17日(日)はイースターです。皆さんでキリストの復活をお祝いしましょう。
 

2022年4月11日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
お元気でお過ごしでしょうか。先日(5月28日)政府が9都道府県に出している緊急事態宣言が再延長されたことを受けて、三か月振りに、文面でつながりを図ることにいたしました。
今のところでは、東京五輪開催一か月前までの再延長ですが、国内では東京五輪開催の更なる延長もしくは中止を求める声が増える中で、海外では多少の警戒も表明されるものの、日本への信頼感から大丈夫だろう、というのが大勢でしょう。開催の是非はどうあれ、皆様の安全を祈ります。
北海道や愛知県などには国内感染者が著しく増えている中で、ワクチン開発、実施のため、欧米各地では、すでに感染傾向が低下に転じています。現時点で一番期待されているファイザー社のワクチンを開発したのは、学生時代に免疫工学専攻で知り合いその後共に研究を続けてきたトルコ系のシャヒン夫妻がドイツのマインツ市に起こしたベンチャー企業ビオンテック社だ、と聞いて驚きました。しかも、夫妻が2001年にがん治療開発のために創設したガニメド社は2016年に日本のアステラス製薬によって買収されたので、夫妻には多少の余裕もあるはずでしょうが、なおも自転車で通勤している、と年始に読んだ記事に書いてありました。
それでは引き続き体調管理に気を付けていきましょう。

2021年6月1日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
いかがお過ごしでしょうか。国際女性デー(3月8日)のおよそ2か月前、2006年以来「世界ジェンダーギャップ報告書」を出している世界経済フォーラムは、153か国を対象にジェンダー格差が少ない順のランキングを発表しました。最新のランキングで日本は121位にあり、G7の中で最下位です(ドイツ10位、フランス15位、カナダ19位、イギリス21位、米国53位、イタリア76位)。
もちろん、ジェンダーについても国際的なランキングには十分に反映されていない日本特殊固有の強みもあります。
女性蔑視の失言で東京オリンピック?パラリンピック競技大会組織委員会の会長は橋本聖子さんに代わり、担当大臣として後を継いだ丸川珠代さんと東京都知事小池百合子さんを加えれば、いつの間にか三人の女性が、今回日本を世界に発信する最大のイベントを指揮することになりました。
今年の国際女性デーで掲げられるキャンペーンのテーマはChoose To Challengeです。「挑戦することを選びましょう」という呼びかけです。今年に限らず、一生にわたって藤の学生がこの呼びかけに応えるように祈ってやみません。
それでは、引き続き体調管理に気を付けていきましょう。

2021年3月1日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
いかがお過ごしでしょうか。今日、2月1日の『毎日新聞』表紙には「入院 誰を優先すれば」という見出しが付いており、「施設の強いられる『選択』」という副題でも示唆されるように、コロナ禍はいまだ和らいでいません。
2週間前に50回目の開催を迎えた世界経済フォーラム主催のダボス会議もオンラインに限られていました。印象に残っているのは、ワクチン?ナショナリズムへの警鐘を鳴らしたドイツ首相アンゲラ?メルケルさんの講演でした。近頃、異変の勢いを振るっているウイルスには、国や地域の境が知られず広がっていくので、まさしくグローバルな規模の連帯をもって立ち向かわなければなりません。
去年の夏以来、教皇フランシスコは、感染症対策能力における南北格差の広がりに歯止めをかけるべき必要性を訴えていますが、今になっても、南半球における多くの国や地域ではワクチン接種が一つも施されていません。他方、欧州連合は圏内の人口を3回も接種できるワクチンを蓄積しています。
皆さんが一刻も早く正常な学生生活に戻れるように祈って止みません。このような状況のもとに、種々の制限を強いられていることを少しでも知っていただきたい、と今回やや暗い情報を提供させていただきます。
それでは、寒さも厳しい中ですが、引き続き体調管理に気を付けていきましょう。

2021年2月1日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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あけましておめでとうございます。今年も学生の皆さんお一人お一人の前途が祝福されますように心からお祈り申し上げます。
去年の雪まつりの頃から広がり始めた新型コロナウィルスに対するワクチンの開発が進む中、ようやく終息への見通しができていますが、2021年の大半もコロナとの闘いに費やされるでしょう。この覚悟を呼びかける例年の司牧書簡において、北海道のカトリック教会を司る札幌司教ベルナルド勝谷太治様は災禍効果の一つをこう評価しています。「人を選り分けることなく全人類に等しく襲い掛かるこの疫病は、この地上に住むすべて人が一つの共同体としてその運命を共にしていることを強く意識させました。」
教会内の共同体意識を維持するためにインターネット通信を利用して、リモート集会や会議の開催が当たり前になったことを評価したうえで、新しい取り組みを紹介しています。「リモート集会はお互いが顔を合わせて、気楽に話したり、情報を交換したりというような交流には向きません。その為、最近ではハイブリッド集会(実際に集まる人とリモート参加の人が混在する集まり)も当たり前のように開かれています。」
本学でも種々の工夫が凝らされています。対面授業に加えて正常の学生生活が再び可能になるまで、引き続いてご理解、ご協力をお願いいたします。
それでは引き続き体調管理に気を付けていきましょう。

2021年1月6日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
いかがお過ごしでしょうか。10月中の短い通学期間の後、再び非対面授業に変わっていることに寂しい思いをしている方も多いでしょう。できるだけ良い学びを提供するため、教職員は一丸となって工夫を凝らしていますが、先日、北16条キャンパスで実施された健康診断の際に行列から上がった笑い声を聞いて、学びは授業を受けることに尽きるものではない、と改めて痛感いたしました。一刻も早く、世界の若者が再び正常な学びができるように、と祈って止まない次第です。
ドイツ最大の週刊誌『デア?シュピーゲル』の11月21日号の表紙に「お祝いのための闘い―どのようにして今もってクリスマスを救うことができるか」という題が付いていて、中には種々多様の試みが紹介されています。キリスト教では復活祭こそ最大級のお祝いですが、定冠詞が付くお祝いがやはりクリスマスです。救い主の死と復活よりは、飼い葉桶に寝かせてある乳飲み子の方が馴染みやすいからでしょう。

その降誕祭の準備は11月27日から12月3日の間の日曜日に始まり、待降節と呼ばれています。『デア?シュピーゲル』の特集が11月最終号に出た所以です。今回は従来通りのお祝いができない、というのが特集の前提です。紹介されている試みの一つは、12月24日の夜に予定されている礼拝を教会からサッカー競技場に移して執り行うことです。大都市ハノーヴァーとニュルンベルクで予定されている実施内容では、大勢の参加も社会的距離も可能だという美点です。冬でもサッカーの観戦に大勢が集まるので、気温は心配事ではないようです。
それでは引き続き体調管理に気を付けていきましょう。
 

2020年12月1日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
いかがお過ごしでしょうか。この夏、教職員は一丸となって、秋から再び対面授業ができるよう、細心の準備に取り組んでまいりました。あらためて、その企画力や行動力に感心し、感謝しています。おかげで、もうすぐキャンパスでお会いできる機会が戻るので、つながりを文面で図ることを今回で最後にしたいと思います。これまで目を留めてくださって、ありがとうございます。

振り返ってみると、ここで最初にご紹介させていただいた女性の政治家はニュージーランドの若い首相のジャシンダ?アーダーンさんでした。前回、その国さえ感染拡大に変わったので、当面の間、わたしたちを取り巻く環境が厳しさを増していくことを覚悟せざるを得ない、と伝えました。ところが、ニュージーランド全国に布かれていた制限は9月21日に解除され、感染再発の中心地であった最大都市オークランドでも24日に緩和される、と報道されています。しかし、全世界にとって要注意に変わりはないでしょう。
大学が新たに定めたルールを厳守してくださるようお願いします。
 

2020年9月24日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
いかがお過ごしでしょうか。初めての8月中の授業ご苦労様でした。今回の休暇で心身ともにリフレッシュされるよう祈っています。
当面の間、わたしたちを取り巻く環境が厳しさを増していくでしょう。春にはコロナ対応の優等生として話題になっていたニュージーランドさえ感染拡大に変わった中、二度目のロックダウンを絶対に避けたいと、フランスをはじめ欧州各国の行政は感染防止のためのルールを増加させ、強化しています。大勢はその政策を支持しているものの、うんざりする人も増えています。

前回紹介したように、8月1日に「自由の日」と題してベルリンで繰り広げられたデモには1万5千人が参加していましたが、8月29日には3万人が欧州各地からベルリンに集まってきました。ベルリンはドイツ連邦共和国を構成する16州の一つで、デモの許可もその管轄です。人と人との間の距離を守る、マスクを着用する、などのルールがこれまでのデモで守られなかったことを理由に、新たな申請は拒否されました。その上訴に答えて、行政裁判所は、ルール厳守体制の整備を条件にデモを許可しました。道路に座り込んでいた3万人が見守る中、警察は整備に頑張ったが、ついに不可と判断し、解散を命じた次第です。
夜のテレビニュースでは事故なしの解散になった、と報道されていました。視聴しながら、こんな苦労もしないで済む文化は居心地良いなあ、と思っていました。
それでは引き続き体調管理に気を付けていきましょう。
 

2020年8月31日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
いかがお過ごしでしょうか。夏季休暇が8月下旬以降に移ったので、初めての8月中の授業は大変でしょう。先日お知らせしたように、後期には、対面授業に戻ることを予定しています。情勢が再び感染拡大に転じているので、予定通り実施できるように、日々祈っている次第です。

近頃、感染対策への反対デモが世界各地に散発していますが、「自由の日」と題して、今月1日、ベルリンの中心で動物園から国会議事堂までの大道を埋めて一万五千人が繰り広げたデモはこれまで最大、と報道されています。個人の自由と権利に対する政府介入の象徴ともみなされているマスクを着用している人はほとんどいなかったようです。テレビの画面に写っていた様子は穏やかで、祭りみたいなものでした。また、数時間後、警察のラウドスピーカーから解散の指示が聞こえたとき、大勢は素直に応じたようです。世界各地では必ずしもそのような反応ではないので、その様子にほっとしました。そして日本でコロナ関係ではデモの痕跡すらないことを改めて不思議に思っていました。
考えてみれば、思いやりの文化では、感染拡大を防ぐため、マスクの着用を法的に義務付ける必要もありません。自粛に頼ることで十分に間に合います。これは個人の自由と権利を重要視している文化との大きな違いでしょう。
それでは引き続き体調管理に気を付けていきましょう。

2020年8月7日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
お元気でお過ごしでしょうか。この数週間、世論の反対や与党内の要求を受けて、政府が政策の方針転換を強いられるケースが相次いでいます。こうした中、日本では珍しい長期政権を握っている安倍普三首相のリーダーシップが問われ始めています。一方、以前から「政界渡り鳥」、最近では「女帝」と揶揄されている東京都知事の小池百合子さんは、女性初の総理候補として話題になっています。
都内の感染拡大警戒レベルが最高の4と判断された15日の夜に開かれた会見が、花川キャンパスからタクシーで札幌に帰る途中で眼前のテレビに映っていました。パネルを掲げてカメラを直視する姿には、情熱的、かつ落ち着いた様子が表れていました。さすが、キャスターの経歴のある方と、関心を持ちながら最後まで視聴していました。

その三日後、朝日新聞の朝刊に石井妙子著の『女帝 小池百合子』の書評が載っていました。一番きつい批判は、「かつて引き立ててくれた権力者を足蹴にする」ということでした。これとそっくりな批判は、およそ20年前には現ドイツ首相アンゲラ?メルケルさんにも向けられました
所属のキリスト教同盟は野党になって以来、メルケルさんはその事務総長を務めていたが、与党の時代、自分を内閣に登用してくれた首相が、党の名誉会長として政治金のスキャンダルで取りざたされるようになった時、直ちに事務総長の進言で免職された次第です。毅然たる決断力は女性政治家の強みであるかもしれません。
それでは引き続き体調管理に気を付けていきましょう。

2020年7月23日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
お元気でお過ごしでしょうか。先日、東京都知事選挙で現職の小池百合子さんが大差で再選を決めたことを受けて、日本社会における権限はまだまだ男性に偏っているなかで、ようやく女性のリーダシップが期待され始めていると、喜んでいます。ところが、そう喜んでいるうちに、欧州連合の二十七加盟国のうちに四ヵ国だけの首脳が女性であることに改めて気づかされました。やはりヨーロッパもまだまだ男女平等からほぼ遠い状態にあるでしょう。

こうした中、今月1日から六ヶ月の間、交代制でドイツが欧州連合の議長国を務めることで、二人の女性が連合内最高の実力を発揮し得る立場にあることは、嬉しい限りです。一人は、言うまでもなく、議長国首相のアンゲラ?メルケルさんです。もう一人は、メルケル政権で相次いで家族大臣、労働大臣、国防大臣を務めたうえで、去年12月1日には5年間の任期で欧州連合委員会委員長に就任したウルズラ?フォン?デア?ライエンさんです。子供のいないメルケルさんとは対照的にフォン?デア?ライエンさんは政治?行政の多忙の中でも七人もの子供を育てました。
離脱したイギリスと欧州連合との将来関係をめぐる交渉は、ドイツ議長国の任期中に完了することが予定されています。お二人のリーダシップに期待したい。
それでは引き続き体調管理に気を付けていきましょう。

2020年7月9日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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いかがお過ごしでしょうか。
札幌駅や大通りなど繁華街にも人出が戻りつつある中、有効なワクチンの開発が成功するかどうかはともかくとして、コロナウイルス発生以前のような生活へ戻るのは難しいという認識が深まり、ライフスタイルの変化を呼びかける声も聞こえてきます。ちょうど5年前、教皇フランシスコがあらわした回勅『ラウダト?シ』の第六章第一節に「新しいライフスタイルを目指して」という題が付いています。
回勅全体の題は、アシジのフランシスコが作った詩の開始句で「わたしの主よ、あなたは称えられますように」という意味です。ちなみに、ダンテの『神曲』にも先立って、イタリア語で書かれた最初の文学作品です。環境保存へのグローバルな取り組みを呼びかけるのが回勅の狙いです。
「わたしたちは歴史上はじめて、共通の運命によって新たな行動を始めることが求められている。……私たちの時代を、生命の新たな尊厳への目覚め、持続可能性を実現するための確たる決意、正義と平和を確立するためのさらなる努力、そして、喜びと祝福に満ちた生命とともに想起される時代にしようではないか。」
こう訴えたうえで教皇は従来の自己中心的な姿勢から他者中心的な姿勢への転換を求めています。「自己を超え出るという基本的な姿勢が、他者と環境に対するどのような配慮をも可能たらしめる土台です。」
 

2020年6月25日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
お元気でお過ごしでしょうか。国内の緊急事態宣言が解除されて一週間も経っています。しかし、いまだ、いつまで自粛すべきか出口は見えません。他方、欧米諸国では、感染拡大対策の緩和や経済活動の再開への動きは、速度に差があっても、着実に進んでいます。こうした中、三か月ぶりに5月31日から、バチカンをはじめとして世界各地のカトリック教会において会衆参加のミサが復活しています。
キリスト教の世界で5月31日は聖霊降臨の祭日でした。これはイースター後の50日目に神の霊が弟子たちの上に降ったことによって教会が誕生したことを祝う重要な祭日で、クリスマスとイースターと同様に連休と結びついている国や地域もあります。各地のキリスト者はまさにグローバルの病が一刻も早く収束するよう祈ったのでしょう。

総決算をするにはまだ早いのですが、とりわけ日本について言えることは、これまでよく生き抜いてきたということでしょう。以前に紹介した新聞記事では、コロナ禍によるドイツの死亡者数が欧州諸国の間で際立って低いことは、メルケル首相のリーダシップをうかがわせる一点と評価されていました。現在、日本の感染者数はドイツの一割にとどまっています。一方、日本の人口はドイツより約4千万人も上回っており、これだけの格差は登録システムの違いだけでは説明できないでしょう。やはり、マスクを着けるのに抵抗が少なく、思いやりの根本姿勢が日本文化(大和魂)のDNAに刻まれていることも一要因でしょう。
それでは引き続き体調管理に気を付けていきましょう。

2020年6月10日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
お元気でお過ごしでしょうか。大きな問題も起こらず、遠隔授業がスタートを切った、との報告を受けてほっとしています。
コロナ禍が続く中、女性のリーダシップにはかつてない注目が集まっています。今月18日のジャパン タイムズは「なぜ女性は危機の際により良いリーダであるか」と題して、女性の首脳を仰ぐ四か国を取り上げています。自問への答えは次のとおりです。トップになるため、その途中で、女性は普通の男性よりはるかに多いハードルを乗り越えなければなりません。したがって、優れたリーダシップを発揮するのに必要なスキルを、普通の男性よりも多く鍛錬し得たのも当然です。

翌日には、前回に紹介した社説に続いて、ニューヨーク タイムズの国際版は「なぜ女性に司られる諸国はよりうまくやっていけるか」と題して、またもニュージーランドのアーダーン首相に次いで15年も前からドイツの首相を務めているアンゲラ?メルケルさんを紹介しています。引き続いて、去年12月、34歳の若さでフィンランドの首相になったサンナ?マリンさんと、今月20日、台湾の総統として二期目の就任式に鑑みた蔡英文さんを紹介したうえで、4人の女性とは対照的に種々多様な起源の情報を熟すことを怠り、意思決定をインナ?サイクルに限定しがちな英米両首脳に厳しい論評を加えます。
世の中が大きく変わっていくような気がします。

2020年5月25日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
お元気でお過ごしでしょうか。連休明けでやっと、授業が開始されたことでほっとしています。遠隔授業なのでお手間がかかるとは承知していますが、参加をできるだけ容易にするため、連休中にも教職員は通勤して、深夜まで工夫を凝らしていたことを皆さんにもぜひ知っていただきたいと思います。
さて、5月4日、ニューヨーク タイムズの国際版の社説に「危機の際に真のリーダーが際立つ」という見出しが付いていました。今回の危機で特筆に値する取り組みをした国の首脳は10名が紹介されましたが、内7名も女性でした。
真っ先に紹介されたのは、2017年10月、37歳でニュージーランドの首相に就任すると同時に第一子の妊娠を知らせたジャシンダ?アーダーンさんでした。2018年3月21日、モスクでの礼拝中51名もが一人の白人優越主義者から射殺されたことを受けて、ベールをかぶったまま首相がモスクの礼拝に参列したことは、危機の際に攻勢を発信せず、社会的不安にも譲らず、リーダシップを発揮することが可能だ。という世界中の同僚へのメッセージにもなったと願っています。
アーダーンさんに次いで、オーストラリアの首相スコット?モリソンさんが紹介されたのは、二人が異なる政治理念を掲げながらも共同に推進した対策の結果、コロナウイルスが両国からほぼ消滅したからでしょう。
藤女子大学からも真のリーダーが輩出されるよう祈っています。
 

2020年5月12日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス


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学生の皆さん、
どのようにお過ごしでしょうか。こんなにも長い間、正常の学生生活をさえぎられていることに心を痛めています。昨年度末、本年度の入学式の中止と共に授業開始の延期を決断した時、まさか、授業が開始されないまま大型連休を迎えることになるだろうとは、思ってもいませんでした。しかも、連休が明けてからも、すぐに普通の対面授業に戻れないこともすでに明らかになっています。大学の実務的な対応ついては、従来通り本学のHPを見ていただきたいですが、政府の専門家会議から「当面は新規感染者数がゼロにはならず、一年以上、持続的な対策が必要になる」と指摘される中で、学長としてはこれまでにも増して、目下の問題について自分の考えを皆さんに伝える必要を痛感するに至った次第です。
今後は、学長メッセージを「つながり」として随時発信します。「つながり」を選んだ理由の一つは、毎回のメッセージ性に自信がないからです。もう一つは、目下の問題に関連して流行語となっている「ソーシャル?ディスタンス」よりは前向きの姿勢を訴えたいからです。もとよりこの言葉は英語のsocial distancingの略語で、感染症のある人と感染していない人との接触の機会を最小限に減らす取り組みを指します。もちろん、これには賛成です。しかし、心理衛生のためにも、身体的?物理的距離の場合にこそ心と心のふれ合い、わけても病める人への思いやりがはなはだ大事だ、と思います。

2020年5月1日
学長 ハンス ユーゲン?マルクス

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